3 大谷氏のもう一つの研究
この藤岡市日野上平でのクロマドボタル幼虫の研究に続いて、もうひとつ大谷氏には大変ユニ-クな研究があります。これは2001年当時、群馬大学大学院教育学研究科に留学中だった時の研究で、「クロマドボタル幼虫と捕食者の相互関係」という論文です。上記「日本産ホタル10種の生態研究」のp137〜p146にも掲載されています(注 この論文と上述のクロマドボタルの背板斑紋変異に関する論文は、合わせて、大谷氏の群馬大学大学院教育学研究科における修士論文になっています)。
大谷氏は、この研究について、論文の冒頭で次のように述べています。
「発光するホタルは、捕食者に認知されやすいという欠点があるために、何らかの防御手段を持っているものと考えられ(中略)、日本のホタルでは、Ohba
and Hidaka(2002)が野外と室内において、体液分泌と捕食行動が示されるとともに、捕食者と考えられる動物との相互関係が提案されているが、十分証明されたとは言えない。また、ホタルの幼虫期における液体分泌と捕食者の相互関係は、ほとんど調べられていない。そこで、本研究ではクロマドボタル幼虫を用いて、忌避性の液体分泌と発光の様子を調べ、それと捕食者との相互関係について、室内実験と野外観察により、その実態を明らかにすることを目的とした。(後略)。注(日本産ホタル10種の生態研究P137から引用)」。
ホタルの幼虫と捕食者の件についてはこれまでにも、噂話としては、いろいろ言われてきましたが、研究する者が少なく定かでありませんでした。したがって、私達の知る限り現状ではこの大谷氏の論文が調査内容とその解析結果と合わせて最も詳しい研究論文です。その研究内容の項目を紹介しますと、次のようになっています。
1 幼虫の体液分泌の確認
2 分泌された液体の忌避性実験
3 捕食実験
4 発光観察
5 考察
・忌避物質分泌と捕食者との相互関係
・発光と捕食者との相互関係
・擬死
この論文は、陸生ホタル生態研究会HPの「研究・資料」欄に掲載いたしますので、そこでも是非ご覧になってください。 (以上)
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